打田翠さんのオブジェ1
晩秋のはじまりに一つだけもいだヒンヤリとした果実、二ヶ月経った今も一向に色づく素振りを見せない。雪のように白いまま、部屋の片隅で青い朝の光を浴びている。そのうち、陶の猿が頂に登って居座ってしまった。まもなく小禽の出番がやって来るとも知らずに。
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新潟に入って早くも十日、日毎に冷たくなる風に身を屈めている。ふと前に視線をやると、室外機の下で斑猫が身を屈めてモゴモゴしている。背を丸めた様はあたかも大きな芋団子のようで僕の気持ちを少しばかり温めてくれた。
十月九日、川越市内にあるgallery『うつわノート』さんで手にした雪白のオブジェです。岐阜県瑞浪市で作陶されている「打田翠」さんの森閑とした朝の含みを帯びたかのような磁土の塊です。
実際にお話してみて、打田翠さんの中で何かが変わりつつあるように感じました。近年、自然の力が創り出す器肌の変化(窯変)に注力されています。
「此まで主に取り組まれてきた練り込みや磁土のオブジェは、自
らのイマジネーションの中に追求する美しさ、言うなれば必然性優位の美。」「此度の個展で主に取り組まれたRAKUやlandscapeは、自らのイマジネーションの外に追究する美しさ、言うなれば偶然性優位の美。」勿論、どちらの美も積み重ねた研鑽があってはじめて成せる業なのです。
何度も叩きつけて磁土に含まれる空気を抜いて馴染ませたあと、生まれたイマジネーションに任せて形にしていきます。打田翠さんはこの作業が好きだと言います。オブジェを作ることは慣れ親しんだ作業が故の安心があるのかも知れません。写経や座禅にみる無の境地がそこにあるのでしょうか。
「思い描いたものを作る、即ち必然。」
「思い描けないものを創る、即ち偶然。」
変わらぬもの、変わるもの、両方を手にした今、作品にどう影響してくるのでしょう。
過去の必然的作業、現在の必然的作業、同じようでいても何かが大きく変わっているのかも知れません。
ん~、モッツァレラチーズに見えなくもない :-)
by waninogena2
| 2016-11-28 21:00
| オブジェ