あたみ温泉
大分出張三日目、少しばかり仕事が落ち着いてきたので、前以て調べていた『あたみ温泉』に行って来た。温泉地として名を馳せる別府と隣接しているにもかかわらず、なぜか名前はあたみ温泉、気にならない訳がない。大分駅からも程近く(徒歩1~2分)、小道を挟んだこの場所で、この街の移ろいをずっと見つめてきたのだろうか。昭和の香りが匂い立つほどにレトロな銭湯、それこそが、あたみ温泉であった。

建物入口

ガラガラと玄関を開けると、懐かしき昭和の番台が目に飛び込んでくる。が、そこには誰もいない。さて、どうしたものか。
あとから来た常連であろうおじさんは、そんなことにはお構い無くちゃっちゃと裸になって、唸り声をあげながらお腹をポポンと叩きだした。支払いのことを聞いたら、「お兄ちゃん、お代は380円。丁度あったら番台に置いときな。ないなら、そこのインターホンで女将さん下りてくっから。」
あの~、女湯側にあるインターホンに手が届かないんですけど。笑
常連であろうおばさん「わたしが押してやろうか?」
常連であろうおじさん「心配ない、大丈夫だ。」
間髪いれずに、僕「いやいや、大丈夫じゃないです。お願いします。」
10分後、やっとこさ女将さんが下りて来た。んこらしょっと。
女将さん「遅くなってごめんね。380円だよ。」
僕「じゃあ、530円で。」
女将さん「はい、150万円のお釣だよ。」
僕「アハハ。」
そんなやり取りは幾つになっても楽しい。気持ちは和んでほっこり、身体は板張りのひんやり床でぶるり、束の間の小さな昭和がここにある。
1956年(昭和32年)創業、玄関周りの豆タイルや飴色の空間、総板張りの美しい床とタイムスリップ要素がそこかしこに今でも点在中。
飴色のパタパタ靴箱と総板張りの味わい深い床が最高。数字ロッカーは塗り直したのだそう。これはこれでチープなレトロ感。
加水、加温、循環及び入浴剤、消毒剤なしの天然温泉100%かけ流し。琥珀色のトロリ温泉は「モール泉」と呼ばれる希少な極上泉質。お肌しっとりツルツル美人の湯。
「あつめのお湯」と「ややぬるめのお湯」の2槽式、職人がコテで作っためずらしい鯉の口からドボドボと湯量もたっぷり。
水色タイルと琥珀の湯、湯の花が相まって、夜のブルーキュラソーのような湯の色。僕の脚もゆらゆらと湯面に見え隠れする、気分はまるで昭和の水曜スペシャル探検隊。
イメージ7
懐かしのカランは「赤→湯、黄→水」と蛇口も別々、シャワーなんて便利なものはない。ケロヨンの黄色い洗面器、ヴィンテージのマッサージ機、ゆる~いお客さん、これでもかとばかりに人情たっぷり昭和の温泉。
帰り際、あたみ温泉の由来を訪ねたところ、「知らないねえ、温泉と言えば熱海だからなのかねえ、先代から聞くの忘れちゃった。あの世だからもう聞けないねえ。」
「こっちにはいつまで居るの?明日もまた来ておくれ。」
by waninogena2
| 2017-01-27 20:42
| 旅行と散歩