うきは市吉井町アート散策2 山口和宏さんの木工所 編
初顔合わせは、ご迷惑を掛けるという最悪の形で実現しました。
場所だけ把握しておこう。自宅らしき建物の前を通ると、大きなガラス張りの向こうで食事をしている人たち。ふと視線を逸らして何事もなかったかのように振る舞うが、時すでに遅し。娘さんが外まで出て来て声を掛けてくれました。
「食事中に本当にすみません。。」
展示スペースへ通され、山口和宏さん、娘さんと婿さん、二才のお孫さんに加えて、犬と猫を含めた家族の皆さんに平謝りのご挨拶でした。あたたかい笑顔に救われたのは言うまでもありません。
風と水と光と、細く連なる小径の奥に自宅と木工所は建つ。そこにある作家の日常風景。
最前列にある編み込みスツールは婿さんの作品です。改善点があるらしくまだまだ売り物にならないのだそう。木工所に立つようになって三年足らず、豊かな可能性が既に広がっています。これからの楽しみが一つ増えました。
ここで暮らす人には日常すぎて気にならないそうですが、鼻をくすぐる天然のアロマを胸いっぱいに吸い込んで、僕は終始ニコニコしてました。
時間にして120分くらいでしょうか。他愛のないことから他愛のあることまで、勝手に熱く語る僕の言葉の一つ一つに静かに耳を傾けてくれます。穏やかさの中に芯を通した意志のある声で一つ一つ丁寧に言葉を返してくれました。
展示風景2
飾り気のない慈味溢れる人柄が、言葉や立ち居振舞いを通して、スーっと胸に染み入るように伝わって来ます。作品の持つ雰囲気そのものです。
「自己を必要以上に主張せず、自然と生活に溶け込み、いつか無くてはならないモノとなっていく。」そんな人です。
「作品を作るとき、僕はアーティスト寄りではなく、職人寄りになる。アーティスティックな感覚が必要になるオブジェはあまり向いてない。漆のモノも本職の人のようにはうまく作れない。」
不要なモノを極限まで削ぎ落とし、必要なモノにフォーカスすることで、より豊かな生き方に繋がる。less is more. よりシンプルに、明確にすることが、よりよいデザインに繋がる。
山口和宏さんだからこそ出来る仕事があります。誰にも真似の出来ない部分が確実に存在するのです。職人の仕事は、完全に自己を消すプロダクト作業だと僕は考えます。その大きな手から生まれる作品は、一目して山口和宏さんのモノだと分かります。手にすれば、言葉がなくともストンと胸の中に落ちてくるのです。
うつくしい仕事を見られる機会が大分市府内町であります。
【山口和宏 木工展】
会期:2017.2.17fli_28tue
作家在店日:2.18sat & 19sun
営業時間:12:30_18:30[2.19sun & 最終日は17:00まで]
お休み:2.22wed & 26sun
場所:ta-na
木の器の時間は、陶磁器のそれよりも遥かにながく歴史があります。にもかかわらず、ハレの器に代表されるように、陶磁器のように日常生活に溶け込み切れていないのはどうしてなのでしょう。どうして主役の座を奪われてしまったのでしょう。
使ってみればその良さが分かります。その手軽さが分かります。キズなんて気にせずガシガシ使って、自分だけの器を育ててみよう!
帰り際、少しだけ木工所を覗かせて頂きました。本当は中までズカズカと入って音や匂いや振動を肌で感じてみたかったのですが、お仕事の邪魔しちゃ申し訳ないので止めておきました。
婿さんが黙々と作業されており、その背中が本当に頼もしかったです。今更ですが、お名前くらいは聞いておくべきでした。。
最後の最後、僕が見えなくなるまで手を振り続けてくれた山口和宏さんの姿が、今も記憶の中にやさしく焼き付いています。
次なる目的地へ向かって、レッツゴー :-) 帰りもまたビューン
by waninogena2
| 2017-02-04 18:52
| 旅行と散歩