益子の雲の中へ1 小野陽介さんの陶工房 編
空に浮かぶ皺一つない薄い灰色のベールの隙間から、差し込んだ細く長い光を手繰り寄せるようにエクリュのスーツケースを片手に旅に出た。春の陽気に誘われて膨らみだした花の蕾がいじらしく、眺めていると今にもポポンと弾けそう。


小野正穂さんの連房式登り窯
小野陽介さんの窖窯
作品3
窖窯の煙突
三月三十日、蕾の綻び始めた益子の郷へ二泊三日の陶の旅へ。
始まりは、予てよりお約束していた小野陽介さんの陶工房を訪ねるところから。

イメージ
長閑な風景に溶け込んだ丘にポツンと立つ名入の小さなポスト。地潜の蛇のように細く長く連なる急斜面の道をエンジンを噴かせて上りきると、風情ある日本家屋と寄り添うように立つ陶工房が見えてくる。散在する陶土の塊、釉薬のバケツ、廃材の木片から、いよいよ陶芸家に会うのだと肌で感じた。
小野陽介さんは陶芸に取り組んで五年目の今後が期待される益子の若手陶芸家です。伸びやかな轆轤と薪窯の窯変が素敵な作品を生み出しています。シンプルで素朴な形、ぬくもり溢れる結晶釉の美しさが目を見張ります。
奇をてらわないシンプルな形は、単純だからこそ誤魔化しの利かない難しさが含まれています。昨今、表層の加工に捕らわれ過ぎて形骸化した軽い作品が増えているのも事実です。シンプルな表層を求めるルーティンワークは、やがて深層を究めるスポットワークへと繋がることでしょう。
後に知ったのですが、父である小野正穂さんは陶芸家、母である優子さんは画家と言う芸術一家なのです。帰り際にお会いしたお二人は、初対面とは思えない程に屈託のない笑顔を見せてくれました。
陽介さんのご案内で訪れた窯場は、背筋が伸びるようなテンションと物が生まれるクリエイティブな感覚に満ち溢れた魔法の空間でした。先の震災による窯場被害の余韻が今も。。




登りきった場所にある土地を切り拓いて、いずれ専用の陶工房にする計画があるそうです。この場所から、しなやかに両の腕を広げてまだ見ぬ世界へと羽ばたいてゆくのかも知れません。
「今の課題は、単式の窖窯と結晶釉をコントロールすることです。時期が来たら、連房式登り窯や自然釉にも挑戦したいです。もしかすると、父の仕事を辿っているかも知れませんね。」
不器用ながらも言葉を一つ一つ丁寧に選び、少し照れながらも真っ直ぐに夢を語ってくれた姿が印象的でした。
微力ながら応援します。エイエイオゥ
明日は、感覚だけを頼りにしてきた自分から一皮剥ける為に、益子の町で色々と勉強して来まーす :-) ムムム
by waninogena2
| 2017-04-07 15:09
| 旅行と散歩