平松壯 陶展 - 後記 -
継ぎものをテーマに展開した平松壯 陶展は、12月8日(日)を以って無事に閉幕いたしました。表現者・平松壯の今後に繋がる展示になったことを大変嬉しく思います。

歴史を振り返ってみると、漆を使った痕跡は縄文時代まで遡ることができます。上野東京国立博物館で開催されていた縄文展に出品されていたことからもそのことが分かります。

連綿と続く時間の中で 継ぎもの が一つの芸術文化として花開くのは茶の湯が大きく影響した室町時代以降となります。元々は割れたり欠けたりしたものを継いで再び使えるようにという勿体ないの精神からだったのでしょう。時代の変化に伴い、直しの一面だけでなく、新たなる美の形成という側面も日本人の心の中に生まれました。
多くの場合専門家に直しを依頼するのですが、今展では陶磁制作した当人に直しを依頼しています。制作から直しまで一人の作家に依頼することで通念のある作品として昇華させることができたように思えます。これもひとえに平松壯が自らの作品に陶胎漆器(陶磁器に漆を塗って仕上げたもの)を持ち合わせていたからに他なりません。
幾人かのお客様から、継ぎものは所謂B級品なのでは。そこに作品として価格をつけるのはどうかとの声もありました。その都度説明させていただいたのですが私の拙い説明で伝わりましたでしょうか。
割れや欠けのある器は、陶磁制作の過程で生まれた偶然の産物であり欠陥品なのかも知れません。処分したくない何かを感じたものだけ手元に残して継ぎによる直しを入れています。そこから最終的に納得したものだけが出品されたような 継ぎもの 作品として成り得ています。
そこには一つの美意識が通っており、作家の編集者としてのモノを切り取る能力が確実に存在しているのです。私にとってのそれは作品以外の何物でもありません。
骨董・アンティークの継ぎものは市場において高額で取り引きされる場合も多くあります。現代作家作品の継ぎものは皆様の目にはどのように写りましたでしょうか。
B級品なのか、はたまた逸品なのか。この議論はいつかまた続けさせていただければと思います。
ヒト・コト・モノを継いでいく。この想いをご来店・ご視聴してくださった全ての人にと言いたいところですが、一人でも多くの人に届けられていれば幸いです。
お持ち帰りになられました器が、皆様の手のひらの中で新たなる時間を継いでいただけることを願いながら結びの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
平松壯 陶展 - 継ぎもの -
会 期:2019年11月30日(土)-12月8日(日)
時 間:11:00〜18:00
休 廊:5日(木) / 最終日 17:00まで
在 廊:11月30日(土)
12月1日(日)、7日(土)、8日(日)
高尾の山麓の一軒長屋。
土を練り、轆轤を挽き、折に触れては切る鎧戸(シャッター)の音が聴こえてくる。
平松壯は陶芸家であり写真家である。
ファインダー越しに覗いた過去・現在・未来を一つ一つ丁寧に焼いてきた。気取らぬ人柄から生まれてくる飾らぬ食の器たち。
今展では、その隅に埋もれていた 継ぎもの にも焦点を当てている。破損した陶磁器を漆などで継ぐそれである。
迎える年の瀬、酒音を重ねた継盃はほんの少しだけ愁いを取り戻す。
写真:平松壯
by waninogena2
| 2019-12-09 17:21
| 展示