平松壯 陶展 - 前記 -
始まりは故 青木亮さんの粉引茶碗でした。
生前にお会いすることは叶いませんでしたが、慕う人たちの想いに触れることで人と成り、仕事の一端を窺い知ることが出来ます。
今展の主役となる平松壯さんは、専門校時代からの友人である氏の仕事に着目し触れてきた一人です。現代美術の時代から生活雑器に至る晩年まで長きに渡りシャッターを切り続けました。
活動は実に面白いものだったと言います。発表ごとに新たな層を積み重ねるようにひたすら前に歩を進めていたそうです。一歩一歩が大きなうねりとなってやがて実を結ぶだろう瞬間を夢に見ていたのです。
生活工芸と呼ばれている地において今なお影響を残していることが、その仕事の如何に凄まじかったかを物語っています。平松壯は氏によって陶芸の奥深さを知ったと言っても過言ではないでしょう。
そして僕はたった一つの茶碗から陶芸に惹かれ、やがて平松壯と出会い今展へと繋がるのです。
十数年前、運命に導かれるように手にしたカメラを傍らに陶芸の道へと飛び込んだ一人の男がいます。陶芸家・平松壯の始まりです。技術云々でなく迸る情動が内から外へと溢れんばかりの氏とは対照的に、情動の鉾先が内から更に内へと向かう中で静けさを手にしたのです。
この静かなる情動は、今を生きる人にこそご覧いただきたいと思っています。
道筋が何処にもなかった時代、直向きに土に触れる人がいました。背中を見続けた人は、想いを継いで一人の陶芸家となりました。作品と対峙した時、簡易消費されることのないその熱き情動があなたの内側に何かを残してくれることでしょう。
今展では、料理映えのする食器から酒器・花器まで幅広くご紹介します。中でも 継ぎもの と呼ばれる一点ものは必見です。同時に写真家・平松壯の仕事もご覧いただける内容となっております。
この機会に表現者・平松壯の仕事をご高覧していただければ幸いです。
Galerie箒星+g 店主
平松壯 陶展 - 継ぎもの -
会 期:2019年11月30日(土)-12月8日(日)
時 間:11:00〜18:00
休廊日:5日(木) / 最終日 17:00まで
在廊日:11月30日(土)
12月1日(日)、7日(土)、8日(日)
写 真:平松壯
平松壯 陶展 - 継ぎもの -
会 期:2019年11月30日(土)-12月8日(日)
時 間:11:00〜18:00
休廊日:5日(木) / 最終日 17:00まで
在廊日:11月30日(土)
12月1日(日)、7日(土)、8日(日)
高尾の山麓の一軒長屋。
土を練り、轆轤を挽き、折に触れては切る鎧戸(シャッター)の音が聴こえてくる。
平松壯は陶芸家であり写真家である。
ファインダー越しに覗いた過去・現在・未来を一つ一つ丁寧に焼いてきた。気取らぬ人柄から生まれてくる飾らぬ食の器たち。
今展では、その隅に埋もれていた 継ぎもの にも焦点を当てている。破損した陶磁器を漆などで継ぐそれである。
迎える年の瀬、酒音を重ねた継盃はほんの少しだけ愁いを取り戻す。
写真:平松壯